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東野圭吾新作『誰かが私を殺した』感想&見どころ紹介!加賀恭一郎が活躍するオーディブル配信用の書き下ろし【ネタバレなし】

オーディブルに東野圭吾の新作が登場しました。

オーディブル用に書き下ろした新作で、オーディブル側もかなり力を入れているようです。

他作品とは比べ物にならないほど凝った演出、記者会見、SNSでの広告などをうっています。

標準の速度で2時間47分、1.5倍速なら2時間弱で聴き終わる短い作品ですが、東野圭吾らしい質の高いミステリになっています。

ミステリの特性上、ネタバレなしで感想と見どころを書いていきますので、ぜひお読みください。

先に『誰かが私を殺した』を聴いてから感想を読みたいという人は、オーディブルの1ヶ月無料聴き放題があるので、そちらで聴いてから戻ってきていただいても大丈夫です。

『誰かが私を殺した』のあらすじ

『誰かが私を殺した』のあらすじを簡単に説明します。

「女帝」と呼ばれている女社長が、亡き夫の月命日に墓参りをしていた際、背後から拳銃で撃たれ、亡くなります。

被害者は、最愛の1人息子の結婚式を1ヶ月後に控えていました。

被害者は、自分が気に入った人物は積極的に取り立てるなど思いやりを見せる一方、気に入らない人物には非情に振る舞う一面がありました。

そういった事情から、被害者に対して、多大な恩を感じている人物もいれば、殺害する動機を持つ人物も多くいるという状況です。

捜査に当たるのは警視庁捜査一課で管理職となっている加賀恭一郎。

被害者は幽霊となって加賀恭一郎に取り憑き、捜査の行方を見守ります。

『誰かが私を殺した』の見どころ紹介

ここからは、『誰かが私を殺した』の見どころを、ネタバレなしで紹介していきたいと思います。

豪華ナレーター陣&演出

『誰かが私を殺した』は、ナレーターが13人もいて、キャラクターごとにしっかりナレーターが割り当てられています。

しかも、ナレーター陣がとにかく豪華!

被害者役に寺島しのぶ、加賀恭一郎役に高橋克典、被害者の一人息子に松坂桃李など、芸能人にそれほど詳しくない私でも知っている名前が並びます。

過去にオーディブルオリジナル作品として、平野啓一郎『息吹』の感想を記事にしました。

ここでは、男性ナレーターが1人で全キャラクターを演じ分けていたので、女性キャラクターが話すシーンでは、シリアスな場面であっても、「何か、オネエの人が話してるみたいだなー」と、少し違和感があったのですが、今回はそんなことにはなりませんでした。

ナレーターだけでなく、拳銃の発砲音やドアが閉まる音などの細かい演出があり、他作品より力が入っているなと感じました。

語り手が、被害者の幽霊!

あらすじで少し触れましたが、今回の語り手は、幽霊となった被害者自身です。

どうやら手足などはなく意識だけの存在で、霊安室で遭遇した加賀恭一郎に取り憑いて、加賀恭一郎の捜査を見守ることになります。

これによって、加賀恭一郎の内面を描くことなく、加賀恭一郎が捜査で得た情報を余すところなく読者に伝えることができます。

また、本来被害者しか知らないため読者が知りようもないことを、読者が知ることができます。

例えば、凶器が拳銃ということで、捜査陣が暴力団関係を疑い、被害者が過去に六本木で飲食店もやっていたことから、その時に暴力団と繋がりができた可能性があると話していると、「暴力団と付き合いなんてねーわ!」と被害者が反論したりします。(当然、読者には伝わりますが、捜査陣は知る由もありません。)

幽霊が語り手という作品は過去にないわけではないですが、長く続いている人気シリーズで使うのはかなり思い切った判断ですね。

過去作とか、今後の作品でも、登場しないだけで、この世界には幽霊がいるんだなーと考えながら読んでしまいます 笑

新バディの女性刑事

今作品では、加賀恭一郎の新しいバディとして、新澤(にいさわ)という女性刑事が新たに登場します。

警察官には見えないような茶色のガーリーヘアで、上司やベテランにも物怖じしない飄々とした人柄ですが、頭はキレるようです。

基本的に加賀恭一郎シリーズは加賀恭一郎の内面は描写しないので、(初期の頃は加賀恭一郎が語り手でしたが、)捜査状況を読者に伝えるためには、捜査員に語り手となる人物が必要になります。

以前は加賀恭一郎のはとこに当たり、警視庁捜査一課の刑事である松宮がその役目を担うことがありましたが、『透明の螺旋』でお役御免になってしまったのかも知れません。

今回は被害者の幽霊が語り手という特殊なケースだったので、新澤が語り手にはなりませんでしたが、今後は新澤が松宮のポジションを引き継ぐ可能性が高いのではないでしょうか。

東野圭吾作品は映像化される可能性が高いです。

なので、若手女優を起用できるような、若い女性のシリーズキャラがいた方が、芸能事務所やスポンサーのウケがいいという狙いもあるのではないかと邪推したりもします。

『誰かが私を殺した』を読んだ感想

『誰かが私を殺した』はそれほど長い作品ではありません。

多くの人が尊敬し、恩を感じている一方、激しい恨みを持っている人も一定数いるという、被害者を取り巻く特殊な人間関係。

犯人は、被害者が夫の月命日に墓参りをする習慣を知っている身近な人間か?

凶器の拳銃の入手ルートは?

ラストの真相解明も、ミステリとして非常に楽しめました。

加賀恭一郎シリーズは、途中からどの作品も「親子関係」「親子の絆」なんかがテーマになっている気がするので、毎回親子が出てきたら注意して見るようにしています。

そもそも加賀恭一郎シリーズとは?

人気シリーズなので、知っている人も多いと思って説明していませんでしたが、そもそも加賀恭一郎シリーズを知らないという人のために、改めて簡単に説明したいと思います。

加賀恭一郎シリーズは、日本のエンタメ系小説の代表作家、東野圭吾の大人気シリーズです。

加賀恭一郎は警視庁で働く刑事です。

阿部寛主演で『新参者』がドラマ化、そのまま『麒麟の翼』や『祈りの幕が下りる時』が映画化される人気シリーズとなったので、原作を読んだことがなくても、存在を知っている人は多いかもしれません。

最近はシリーズ物が増えてきた東野圭吾ですが、元々はシリーズ物が少なく、長い間『探偵ガリレオ』の湯川学シリーズと加賀恭一郎シリーズが二大巨頭といった感じでした。

物理学者が主人公で、トリックに科学的な知識が使われる湯川学シリーズに比べて、刑事が主人公の加賀恭一郎シリーズは東野圭吾としても使い勝手が良いのか、作品数もかなり多いです。

加賀恭一郎の初登場作品は、東野圭吾のデビュー作『放課後』につづく第二作目『卒業―雪月花殺人ゲーム』で、意外にも、この時加賀恭一郎は刑事ではなく大学生でした(剣道日本一!)

シリーズ中に今作とタイトルが似ている『どちらかが彼女を殺した』、『私が彼を殺した』、『あなたが誰かを殺した』があります。

『どちらかが彼女を殺した』は、被害者の兄が語り手で、容疑者2人から真犯人を見つけ出す話、『私が彼を殺した』は、容疑者3人が交代で語り手を務める話でした。

この2作は、物語の最後まで犯人の名前が明かされないという作品で、推理小説好きは推理力を試される必読の作品となっています。(ネット上にしっかりした考察があるので、自力で犯人が分からなくても大丈夫です)

かなり期間が空いて刊行された『あなたが誰かを殺した』は、東野圭吾が10年以上前に「タイトルだけ決まっている」と語っていた作品です。

とても楽しみにしていたので、私は発売初日に購入しました。

「絶対に犯人を当ててやる!」と意気込んで、メモを取りながら読み進めましたが、今作はしっかりと犯人が名指しされて事件がが解決する普通のミステリでした 笑

つづく今作『誰かが私を殺した』も、しっかりと犯人が名指しされますので、モヤモヤした話が嫌いな人は安心してください 笑

ぜひ、オーディブルで聴いてみてください

東野圭吾の新作『誰かが私を殺した』の感想と見どころを紹介しました。

オーディブルオリジナルとして書き下ろされた作品なので、いずれ短編集に収録されて活字化される可能性はありますが、現時点ではオーディブルでしか読む(聴く?)ことができません。

『誰かが私を殺した』自体は短い話で、隙間時間に聴くだけでも2〜3日で聴き終わってしまいます。

東野圭吾ファンで、オーディブルに登録していない方は、『誰かが私を殺した』だけ聴いて1ヶ月の無料期間内に退会するのもありだと思います!

オーディブルはKindle Unlimitedや図書館に無いような新しめのベストセラー本あったり、種類が豊富なので、気に入ったら継続して聴く読書を楽しむのもオススメです!

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ABOUT ME
山本玲
読書が趣味の31歳。 栃木県北部の小高い丘の上にマイホームを建て、首都圏から家族4人で移住しました。 地方移住&転職という人生の節目に、何か新しいことを始めたいと思い、小説の執筆と書評ブログを始めました。 マイペースに更新していくので、ぜひお読みください。